熊野

waterfalls in forest

熊野への誘惑

あまり雨も降らず、今週末の関東は30℃超えという梅雨らしからぬ初夏。
昨今の情勢で電気代はアップしているが、エアコン無しでは生きていけないので細々と稼働しつつなんとか凌いでいる。

今年の初め頃に熊野古道に関する本を読んでから、ずっと熊野への憧れが続いている。
伊勢神宮は一昨年尋ねたのだが、特になんの知識も無く漠然と観光しただけだったのが悔やまれる。ちなみにあの時は浜松→フェリーで伊勢神宮→松坂で1泊→高速船で津からセントレアへ→名古屋、と、三河湾一周がテーマだった。

熊野古道といえば世界遺産にも登録された有名な観光地だが、正直自分は本を読む前まで、なんか自然豊かで綺麗な東北の獣道、といった酷い勘違いをしていた。何故熊野に興味を持ったかというキッカケについてはよく覚えていないが、おそらく単に那智の滝が綺麗だから行ってみたい、程度のものだった気がする。

言うまでもなく、熊野古道というのは昔々の人々が熊野三山と呼ばれる3つの寺を回る時に使った道であり、それも伊勢神宮や京など複数の方面からの道があり、それぞれに名前が付いている。

紀伊路(渡辺津 – 田辺)

小辺路(高野山 – 熊野三山、約70km)

中辺路(田辺 – 熊野三山)

大辺路(田辺 – 串本 – 熊野三山、約120km)

伊勢路(伊勢神宮 – 熊野三山、約160km)

大峯奥駈道 (吉野 – 熊野三山)

– Wikipediaより引用

ちなみに読んだ本というのは五来重さんの“熊野詣”という本。ちょっと記憶が怪しくザックリとした話しかできないが、まず伊勢神宮=生の世界、熊野=死の世界という対比させつつ解説されているところがとても面白くて、まるでファンタジーの世界だなと思った。実際昔の庶民は、まずお伊勢参りということで伊勢神宮へ旅の末に参詣した後、熊野古道を使って熊野三山まで訪ねていく人たちも少なくなかったらしく、いかにこの二ヶ所がセットとして、表裏一体で扱われていたのかが分かる。

人間の底力

熊野には他にも魅力が詰まっており、その一つに補陀落渡海(ふだらくとかい)というなんともおどろおどろしいというか、字面の強い風習がある。どんなものかと言うと、僧侶(たまに例外的に一般人も)が四方に鳥居を携えた方舟に1か月分の食糧と共に入り、その入り口を他の者たちが釘で打ち付けて完全に閉じ込める。少し沖まで他の船で引っ張って行き、その後は大海原に向かって放つ。方舟の主は海流に乗って遥か補陀落(ポタラクとも読む)という楽園の国へ辿り着くと伝えられていた。食糧は長旅のためという理屈は分かるが、出口を固めるのは楽園に辿り着くというのには明らかに無駄というか、不便でしかない。やはり現実的には即神仏と同じで、自己犠牲という尊い行為によって世に安寧秩序をもたらしたいという側面が主だったんだろう。

body of water during golden hour

熊野には他にも面白い話が沢山あるが、それは五来さんの本を読んでもらうとして、あと一つだけ書かせてもらう。それは一遍というお坊さんについてだ。彼は時宗という仏教の一派を立ち上げ、やがてその教えは日本中で大人気となるのだが、一遍の悟りというプロセスで大きな役割を果たしたのが熊野の地だった。彼は念仏の札を配りながら東北から九州まで日本全国を行脚しており、熊野もその例外ではなかった。悟りのストーリーについてはこちらのサイトで詳しく書いてくださっているので、ぜひ読んでみてほしい。悟りを開いた一遍は老若男女問わず信者たちを引き連れ、更に各地を巡り教えを説いていった。その教えの中には弱者救済の趣もあり、信者たちは率先してその手を差し出した。そこにはらい病と言われる人たちも含まれていた。

当時の障害者たちの苦難は想像に難くない。特にらい病というのは近代においてさえも想像を絶する差別、敵意を向けられてきたものだ。五来さんによるとその当時症状が少しでも表れた者は、真夜中家族たちに見送られながら、泣く泣く村を出なければならなかったと言う。熊野はそういう者たちの希望の地でもあり、彼らは変化しゆく体で命からがら彼の地を目指した。手足を動かすこともままならなくなった者は乳母車のようなものに乗るのだが、前述の時宗の信者たちはその車を押すことは万もの徳を積むのと同義と信じ、進んで旅を共にした。先ほどは弱者救済とは言ったが、信者として一遍について行った者たちも決して強者などではなく、むしろ彼らも我々のような庶民、弱者だったのではないかと思う。現代のように比較的物が簡単に手に入るわけでもない時代、徳が積めるという多少利己的なメリットがあるとはいえ、互助の概念がしっかり根付いていたのは素晴らしいし、人間の力を感じる話だと思う。

どの道を行く

すっかり前置きというか、バックストーリーが長くなってしまったが、悩ましいのはどう熊野を巡るかということである。できることなら2、3ヶ月ほど休んでガッツリ歩きで巡りたいところだがそうもいかない。ということでグンと短縮して2、3日ほどを想定する。

関東方面から行くとなると、A→羽田から白浜空港まで飛び、レンタカーで熊野めぐり or B→新幹線&在来線で伊勢まで行き、お参りした後レンタカーで熊野めぐり、の2パターンかなと思っている。Aの方が手っ取り早いが、かつての庶民たちが巡った伊勢→熊野という順ではなくなる。あと熊野には温泉もあるようで、温泉大好き人間としてはそれも見逃せない。なんでも湯の峰温泉という温泉街にはつぼ湯という、小栗判官という人物が浸かったところ、たちまち病から復活したという伝説の湯もあるらしい。

ん〜〜悩ましい!(おわり)

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